パーリンカ輸入の話

お店の開業までの話は前回で完結した。今回は当店のメインの商材である『パーリンカ』をどのような工程を踏んで輸入したのかを書こうと思う。

「バーテンダーってお酒のプロだよね。なんでも知ってるよね。」
なんてよく言われる。なんでもは知らない。知っていることだけ。
そしてお酒のことは詳しくても、どのようにしてこのお酒が海外から日本に、そして手元にあるのか、という輸入や物流について詳しいバーテンダーはほとんどいない。なぜならバーテンダーの業務ではないからだ。

ここで言う輸入とは、よく聞く「個人輸入」とは全くの別物。


そんな輸入の話をちょっとずつ…ただどこから書けばいいのか。例によって話は脱線しまくるけどお付き合いくださいませませ。


まず、Bar Pálinkaを開業するにあたって日本で買うことのできるパーリンカがないか調べた。 

 

 

な か っ た 。

まじかよ。

 


日本で買えないお酒の専門店をやろうなんて今思うとぶっ飛んでるな……

 

ちょっと前までは買えたんだけどな……

 

そう、6年くらい前にハンガリーにある高級レストラン「Gundel」のオリジナルパーリンカが数種類手に入ったが輸出側の問題で輸入が止まってしまっていたという。なんやかんやあってGundelのパーリンカの取り扱いはやめてしまったそうだ。(ちなみに今は弊社を含めて何社か取り扱っているところが出てきている。めちゃくちゃいいこと。競合他社で潰し合うのではなく、協力してパーリンカという畑を耕している感覚に近い。僕が勝手に思ってるだけかも。新規参入は非常に喜ばしいのでどんどんパーリンカを輸入する業者が出てきてほしいと心から願っている。)


話を戻す。そう、当時は取り扱い業社が一社もいない状況だったのだ。


付き合いのある酒類メーカーや輸入業者に「パーリンカっていうお酒があってぇ……美味しくてぇ……蒸溜所紹介するので輸入してくれませんかねぇ……」と掛け合ったものの知名度も皆無で需要が見込めず、上に稟議が通るはずもないのでNGという返答が揃った。

(誰も輸入してくれないなら自分で輸入すればいいじゃない…)
頭の中で誰かが呟いた。誰だよお前は。

お酒の輸入と言ってもそう簡単なものではない。
ただ輸入しなければお店はオープンできない、オープンは出来たとしても未来は広がらない。やるしかないのだ。

「できらぁ!!!!」
鼻息荒く、輸入を決意。

まず輸入免許を取得。
これは必要な書類を提出すればいいだけだ。なのでコツコツと書類を作成、手配しまとめればいい。
資金繰表、住民票、納税証明書などなど一般的な法人業務でも使用する書類はもちろん、輸入酒類の品目、販売場所の登記簿やレイアウト(お酒のストック、レジ、電話、PCなどが部屋のどこに配置されているか)、通信酒類販売免許の場合はHPのガワ(免許取得前からページのたたきが必要となる)、などなど…その中で一際難易度の高いものがある。

『取引先の内諾書』というものだ。

仕事で取引先と仕事をする場合はどの仕事でも契約書というものが巻かれる。
この内諾書というものはその一段階前、契約前に契約することを約束するための書類となる。
免許を取得する前に取引先と「まだ免許持ってないけどもし免許取ったらうちと取引してください。」みたいなやつ。
輸入するお酒の蒸留所と販売先の酒屋さんの承諾を得なければいけないので免許取得前から信用を獲得しておく必要があるのだ。新規参入難しすぎワロタ…
百歩譲って酒屋さんはいい。修行時代からお世話になっている酒屋さんがあるので事情を話せば分かっていただける。

問題は仕入れ元となる蒸溜所だ。
弊社で輸入しようとしている『パーリンカ』はハンガリーの蒸溜酒だ。
ハンガリー…そう、ハンガリーにある。

「メールでいいやんけw」

とはならない。


契約前の内諾書ではあるが実質契約書と同じレベルの効力があるので信頼関係を構築する必要がある。
「免許ないんだけど内諾書が欲しくて〜、あ、いや輸入免許はないんだけどね、はい…内諾書…契約書みたいなもんです…はい…日本のシステム上必要でして…はい…あ、輸入免許はまだなくてぇ……免許取るためにまず内諾書が必要でぇ…あ、だめ?怪しい?そうですよね〜……」

事情を説明しても当然怪しい。輸入免許持ってないのに輸入の契約など承認してくれるはずがない。


マジでどうなってんだこのシステム。

現地へ赴くしかない。

 


というわけで

Let’s go to Hungary!!

ハンガリー到着。

 


蒸留所へ行く。


製造工程を見る。

 


こだわりを聞く。
どういった思いでパーリンカを作っているかを聞く。
日本でパーリンカ専門のバーを開業することを話す。
なぜパーリンカを輸入したいか、こっちの思いを話す。
そして事情を話す。


熱意が無事伝わり快諾!!西日眩しすぎぃ!

もちろん全ての蒸留所が快諾というわけではない。
元々社会主義だった歴史も関係しているのか、商売っ気のない蒸溜所も多く、「遠いところ来てくれてとても嬉しいけど、なんか面倒臭そうだからいいや。手の届く範囲でうちのパーリンカを買いに来てくれる地元の人がいればそれで生活できるし」みたいなノリでとんでもない美味しいパーリンカを造ってる天才もいる。
「面倒なことはうちで全てやるので……あなたは美味しいパーリンカを造ってそれを梱包して頂くだけでいいので……。ちょっとだけ書類用意して貰ったりハンガリーの関連施設にメールして貰ったりするかもだけど……。この美味しいパーリンカをなんとしてでも日本のお客様に届けたくて……」なんて説明もした。

最初のハンガリー商談強行軍ではハンガリー政府のパーリンカ担当の方が同行してくれハンガリー語でも丁寧に説明してくださった。

実はハンガリーへ赴く前にハンガリー政府の方と連絡を取り合っていた。

「かくかくしかじかで…」
「あなたパーリンカ騎士団入ってるでしょ?いいわよ」

騎士凄すぎぃ!!

 

パーリンカ騎士団の話はブログの開業物語の最初に書いてあるので気になる方はこちらへ


蒸留所まで政府が車を出して下さったしこちらの事情も汲んで下さって蒸留所にも事前に連絡をしていただいていた。

この時に回った蒸留所は6箇所。蒸留所には行けなかったがブダペストで担当者と話をすることができた蒸留所が2箇所。壮絶なスケジュールだった。朝から晩までずっとパーリンカ飲みまくってたな…。
基本的に扱うお酒は全て実際に飲んで美味しいと思うものや面白いと思うものを選んでいる。どれも美味しいのだが比べるとやはり優劣が出てくる。
数ある中から文字通り厳選している。説明も含めて感動してもらい美味しいと思ってもらうのはお店ではいつでもできるが一般販売を開始するとそうもいかない。オンライン販売で買っていただいたお酒をご自宅で飲んでいただく際に説明はないのだ。説明がなくても感動的に美味しいものをお届けしたいという思いも込めてしっかりとテイスティングし厳選した。
おそらく滞在5日間で200種類以上のパーリンカを飲んだが二日酔いにならなかったの本当にすごい。お酒弱いのにな。二日酔いにはならなかったが度数はしっかりあるのでちゃんと酔っ払う。朝起きたら記憶に全くないピザがテーブルに置いてあったのはめちゃくちゃ笑った。なんでだよ。疲労はしっかりと蓄積していた。

そんなハンガリー渡航。これはTwitterで実況してたりするので探してくだちい。


さて、輸入免許取得に必要な書類が全て揃った。

これだけ苦労していてまだ輸入免許が取得できてないの、面白すぎる。
ここから申請開始だぞ。ウケる。

書類に不備もなく無事輸入免許が取得できた。

輸入免許だとか酒販免許だとか色々な言い方をしているが、ここで正確な名称を書いておこうと思う。おせーよ。

まず酒販免許の種類だが3種類ある

①一般酒類小売業免許
店舗で酒類を販売するための免許
これがあると酒屋さんができる!

②通信酒類小売業免許
オンラン上で酒類を販売するための免許
ネット通販でお酒が売れるよ!便利な時代だね。

③酒類卸売業免許
酒屋さんにお酒を卸売できる免許
全国各地の酒屋さんに卸売してそれぞれの店舗で小売してもらうことができる!販路を一気に拡大できる。

③が細かくて、8種類に区分される。その中の一つが
「輸出入酒類卸売業免許」だ。自分で輸入したお酒を販売することができるようになる。

とりあえず全部とった。

次回、成分検査の話