壁の模様の話
前回は店舗全体のデザインについて少し触れた。
今回はBar Pálinkaに入って一番目を引く、あまりにもカラフルな壁の模様の話。
前回の続きなのでまだ読んでない方は前の記事から読んでいただくとして、早速松沢がデザイナーに見せられたデータを添付する。
川畑「パーリンカに限らず、お酒の“テイスティングノート“ってあるじゃん?それ」
松沢「なるほど???」
今までの常識を覆すバーの壁面。やはり松沢、様々な固定観念に囚われすぎていた。このカラフルさは…落ち着かないだろ…というか、いや…いやいやいや…ちょっと待って…。えぇ…?
Goサインを出すまでに日数を要した。
これを提案された時の松沢の気持ちを考えて欲しい。……結構マジに考えてみて欲しい。今はもうすでにBar Pálinkaが完成しているので想像できないかもしれないが、ワクワク以上の不安があったのだ。
壁に埋め込む特注の箱に合わせたサイズの特注タイルに一枚一枚特殊な方法で印刷し、それを壁に貼り付けていくのだと言う。
店内全体で900枚以上あるタイル。単色のタイルを除けば同じタイルは一枚もない。同じパターンは使用していても縮尺や色合いは全て調整している。照明の当たり具合や位置、目線など全てを考慮した彩色になっているのだという。変態すぎる。
これを引き受けてくれる印刷会社を探すだけでも一苦労だった。
唯一この印刷が可能だという会社が見つかり依頼をし作業を進めるが、ここでまたトラブルが発生する。
出力された色が全然違うのだ。
サンプルで何枚か印刷してもらった段階で発覚した。出力される色が違うというのはよくあることらしいが、あまりにも色が違うのだ。マジかよ。マジかよ…?どうするもこうするも、やることは一つしかない。
印刷会社にその会社のプリンターのカラーチャートを借りて、900枚以上のタイルの色を全て調整し直した。川畑だけでなく総動員で。
このカラーチャートに則ってCMYKを入力するが画面では全く違う色に見える。どんどんデータを修正するが、本当にそれが正しいか、全体並んだ時に綺麗に見えるかどうかはもう信じるしかない。祈るしかできないのだ。
やるしかねえな、と決意する菅原。顔が引き攣っている。検証したタイルやアクリル板が見える。
松沢もCMYK値を見定め、イラストレーターで修正する作業をこなした。CMYK値を即答するバーテンダー、そうそういない。マイナーなカクテルのレシピを即答するような感じで「C20,M20,Y70,K30!!」などと言うのだ。いやぁ…なかなかいない。
日数は掛かったが修正も終わり、データを入稿し、印刷完了を待つ。菅原が一日中修正したのちにイラレが強制終了し、途中で保存していたデータごと消し飛んで絶望していたあの日も今となっては懐かしい。発狂してたな。
無事理想通りの色で印刷され、納品された。タイル全てにナンバーを振ってあったのでその仕分け作業は本当に大変だったと思う。印刷会社さん本当にありがとうございます。
最初はデータを紙に印刷し、それを壁に貼り付け、照明による色の見え方の変化などを全て検証した。この時はまだCMYKの色校正(リテイク)の地獄を知らない。
タイルそれぞれのパターンについてはそのうちまとめたページを作る予定なので乞うご期待。
次回、椅子と内装コンセプトの話